この記事は『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』についての書評です。
『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』は、けんすうさんの著書。
2023年に幻冬舎から出版されました。
やりたいことが見つからない人向けの本で、物語の主人公のようにロールプレイをすることでキャリアを探る方法を教えてくれます。
- 上司から「やりたいことはないの?」と言われて困っている方
- 「やりたいこと」がある周囲の人が眩しく、憧れを感じている方
- 今後のキャリアや人生について真剣に悩んでいる方
本記事が、良書との素敵な出会いのきっかけになれば幸いです。
本の簡単な紹介
起業家として有名な「けんすう」こと古川健介さんの著書。
キャリア設計をする際のポイントを平易な言葉で教えてくれます。
世間では「やりたいこと」が重視されていますが、「やりたいこと」ってなかなか見つからないですよね。
そこで、この本では「理想とするキャラクターになりきって行動する」という、ボトムアップ的なプロセスを推奨しています。
キャラクターになりきって自分の物語を紡いでいくので、『物語思考』というわけですね。
「やりたいこと」がなかなか見つからなくて悩んでいる方には、本書の視点・考え方がヒントになるかもしれません。
この本を読んだ理由
会社の評価シートが変更となり、なぜか「将来やりたいこと・なりたい姿」という項目が増えました。
そこに書かれた内容をもとに、会社内でのキャリアアップの方法を上司が一緒に考えてくれるそうなのですが、私は自分が何をやりたいのか、今後どのようになりたいのか分かりません。
内向型で刺激に弱い私にとっては、一日一日を生きるので精一杯なので、将来のことなんて考える余裕が無かったのです……。
ですが、社内での評価にもかかわることなので、無視するわけにはいきません。
「これは困ったなぁ」と思いながら、ネットで参考になりそうな本を探していたところ、ちょうどAmazonのランキングに載っている本書を見つけました。
けんすうさんはnoteでも有名な方で、その方の新刊であるということと、評価も高かったということで興味を惹かれ、すぐに購入した次第です。
印象に残った箇所
特に印象に残ったのはステップ5の「物語を転がそう」です。
今回はその中から、個人的に学びになった箇所をご紹介します。
自分の物語を前に進める5つのコツ
けんすうさんは、自分というキャラクターの物語を進めるコツは5つあると仰っています。
- 不安なことはすべて紙に書き出す
- 尊敬する人にメールで相談するふりをする
- アイデアを温めない
- 「判断」と「決断」を区別する
- リスク管理表を作る
それぞれについて軽くみていきましょう。
不安なことはすべて紙に書き出す
頭の中を整理する方法として「ジャーナリング」というものがあります。
私も以下の書評でご紹介しましたが、いわゆる「書く瞑想」ですね。
人間は紙に手書きすると、不思議と目の前の考えが整理される生き物です。
目の前に具体化されるだけで、疑問点が明らかになったり、不安点が解消されたりするんですね。
そのため、不安で行動できないときは紙に書き出すのが効果的です。
ポイントは手書きすること。
スマホやパソコンでは、手書きほどの効果はありません。
困った時は、とりあえず頭の中のものを全部紙に書き出してみましょう。
尊敬する人にメールで相談するふりをする
問題解決に有効な方法として、誰かに相談するフリをする、というものがあります。
その中でも、けんすうさんは「自分が尊敬する人にメールで相談するかのように文章を書いてみる」ことを勧めていました。
第三者に向けて書こうとすると、自然と客観的な視点を持つことができるので、冷静に状況を把握することができるからです。
これと似た方法として、「ラバー・ダッキング」というものがあります。
バレットジャーナルの本で紹介されていたものですが、他者に状況を詳しく説明することを通じて頭の中を整理し、物事を俯瞰するテクニックのことです。
もともとはアヒルのぬいぐるみに話しかけていたことが名前の由来だとか。
とにかく、悩みや不安があるときは、尊敬する人にメールでも、目の前のお気に入りのぬいぐるみでも良いので、第三者に説明するつもりで書いたり話したりするのが効果的ということですね。
アイデアを温めない
けんすうさん曰く、「思いついたらすぐにやってみるということ」が大事とのことです。
とある美大での実験では、「一つだけいい作品を作ってくれ」と言われたグループと「クオリティは問わないからとにかくたくさん作ってくれ」と言われたグループにわけて完成した作品を売ったところ、後者のグループの作品の方が高く売れたとか。
つまり、量は質を凌駕するということですね。
画期的なアイデアは滅多に出るものではありません。
良いアイデアを一つ捻り出す時間があったら、微妙なアイデアでも良いのでとにかく大量に行動してみるほうが良いのです。
「判断」と「決断」を区別する
けんすうさんは、「判断」と「決断」を明確に区別しています。
具体的には、「判断」とは以下のプロセスを経るもののこと。
- 判断のための材料を集める
- 真偽や善悪を見極める
- 自分の考えを定める
一方で、「決断」は意思をはっきりと決定すればそれで終了するものだとか。
何かに悩んで行動できない場合は、自分が「判断」に悩んでいるのか、「決断」で悩んでいるのかを区別しなければなりません。
「判断」で悩んでいるのであれば、状況に応じて情報を集めることが正解かもしれませんし、情報収集は終わっていて、あとは自分の考えを定めるだけかもしれません。
しかし、「決断」で悩んでいる場合はできることはほとんどありません。
あとは自分の意思を決めるだけなので、ずっと悩んでいても状況は変わらないからです。
「決断」で悩んでいる場合は、ある意味、ノリと勢いも大事かもしれませんね。
リスク管理表を作る
行動すると何かしらの結果が出ます。
もしも、その結果によるリスクを怖がって行動できない場合は、リスクが発生した場合の対処法を決めておきましょう。
想定されるリスクとそれを回避する方法、実際に起こった場合の対処法を事前に定めておくのです。
そうすれば、実際にリスクが顕在化した場合でも、事前に準備しておいた対処法を実行するだけなので、慌てることもなくなります。
何事も事前の準備が大事ということですね。
感じたこと・考えたこと
「やりたいこと」が見つからない方に向けて、とても平易な言葉で語りかけてくれる本でした。
タイトルにもなっている「物語思考」ができるようになると、「〇〇だったら、この場面ではこのように行動するよね」という判断ができるのだと思います。
「憧れの人の行動を真似る」という方法を聞いたことがありますが、それに近いかもしれません。
心理学の用語で「パワーポーズ」というものがあります。
強そうなポーズを取ると精神的にも強気になる、という現象ですが、これもある意味で「物語思考」なのかも、と思いました。
内容が平易で章も細かく分かれているので、隙間時間にさっくり読むことができるのも良かったです。
「キャリア設計」というとなんだかとっつきにくい、と感じる人におすすめ。
それから、文体がとても柔らかく感じたのですが、どうやらメルマガの内容をもとに編集しなおしたそう。
割と砕けた語り口調なので、もしかすると人によっては合わないと感じるかもしれません。
書店やAmazonの立ち読み機能なので、少し文体を確認してから購入するのが良いと思いました。
まとめ
この記事では、けんすうさんの著書である『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』の概要と感想をご紹介しました。
「やりたいこと」の見つけ方に関する本は数多くありますが、本書は既存の本とは異なるアプローチで書かれていて新鮮でした。
既存の本がしっくりこなかった方は、一度読んでみると新たな発見があるかもしれません。
私自身もキャリアに悩むことが多いのですが、けんすうさんの考え方を参考にして、「自分が理想とするキャラクターだったらどうするだろうか?」という視点を持ってみようと思います。
「やりたいこと」が見つからなくて悩んでいる方や、ご自身のキャリアを見つめ直したいという方の参考になれば嬉しいです。