この記事は『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』についての書評です。
『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』は、ジョン・ムーアさんの著書。
2014年にディスカヴァー・トゥエンティワンから出版されました。
あのスタバを支える成功哲学がギュギュッと詰まったビジネス書になります。

本の3行紹介
スターバックスの成功の本質を表す46個の言葉を紹介した本です。
本書はスターバックスの哲学・ルールを初めて外部に公開した本であり、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田さんも以下のようにお墨付きを与えています。
「お客様本位、品質本位、従業員本位。この一冊に、スターバックスのエッセンスが詰まっています」
元スターバックスコーヒージャパンCEO 岩田松雄
誰もが一度は目にしたことのある「あのスタバ」の経営哲学がギュギュッと詰まった、ビジネスパーソン必読の一冊です。
- 第1章 スターバックスのマーケティング&ブランディングに学ぶ
- 第2章 スターバックスのサービスに学ぶ
- 第3章 スターバックスの人材育成に学ぶ
個人的な3つの学び
本書を読んで得た、個人的な学びポイントを3つまとめます。
「どこにでもあるもの」を「他にはないもの」に変えよ
スタバでは、ニーズ(必要なこと)ではなく、ウォンツ(求めること)を満たすことが大事とされています。
コーヒーが飲みたいお客様のニーズとしては、普通のコーヒーを提供すれば最低限OKではあるのですが、スタバではそこからさらにウォンツを満たすように行動するのです。
この場合のウォンツは「居心地の良い空間で素敵な休憩タイムを取りたい」といったところ。
そのウォンツを満たすために、スタバでは一つ一つの接客から店内の雰囲気づくりまで、とてもこだわりを持って取り組んでいるのです。
そして、「スタバに行けば素敵な休憩タイムを取れる」と認知されれば、「どこにでもあるコーヒーショップ」から、「他にはないコーヒーショップ」にレベルアップできるのですね。
ブランドを広めたければ、まずカテゴリーを世に広めよ
顧客が実際に気に留めるのは、新しいブランドではなく新しいカテゴリーだそうです。
本書で例として挙げられていたのは、スペシャルティコーヒー。
スペシャルティコーヒー業界をリードしているのはスターバックスですが、どうしてスペシャルティコーヒー業界で成功することができたのでしょうか?
その成功要因は、スタバというブランドに関心を集めたからではなく、スペシャルティーコーヒーというカテゴリーに関心を集めたから。
新しいカテゴリーが広がらないと、そもそもどんなにブランドが有名でも、スタバファンの人以外にシェアは広がっていきません。
しかし、先にカテゴリーを世の中に広めると、世界中の人が顧客になります。
そして、カテゴリーの認知度が広がったところでシェアを取りにいけば、そのカテゴリーで一番最初に想起されるブランドになれるのです。
最近の例でいうと、私はPayPayと同じように感じます。
PayPayが登場した際、大量の資金を投入して、まずは「QRコード決済」というカテゴリーを広めていましたよね。
そして、他社も参入して盛り上がったのですが、その時点でみんなが使っていたのがPayPayだったので、誰もがPayPayを最初に利用するようになりました。
これが、最初に「PayPay」というブランドを広めようとしていたら、それほどQRコード界隈は盛り上がっていなかったかもしれません。
そのカテゴリーを盛り上げることが、自社のシェア獲得に直結するのですね。
最大ではなく、最高になれ。
スタバには「最高ではなく最大になろうとすると、企業の使命の価値を下げることになる」という暗黙の哲学があるそうです。
これは、スターバックスの元CEOであるジム・ドナルドさんの以下の言葉に体現されています。
9000店舗目をオープンするんじゃないよ。1店舗目のオープンの、9000回目を迎えるのさ。
スターバックス元CEO ジム・ドナルド
これは、スターバックスが9000店舗目のオープンを迎える際、「もうすぐ9000店舗目をオープンするなんて信じられない」と言われたことに対して、ジム・ドナルドさんが答えた言葉です。
いくら大企業になろうとも、いつでも一度に1店舗ずつオープンしていく気持ちでいることに変わりはないということですね。
これはなかなかできない考え方だと思いました。
スタバはいつだって、中小企業としての心意気を忘れてはいないのです。
感想
スターバックスの成功の礎となった経営哲学、社風、価値観などの各種エッセンスについて解説した本でした。
エッセンスは全部で46個あり、企業としてのありかた、お客様との向き合い方など、スターバックスのさまざまな事例とともに紹介してくれるので、具体的にイメージがしやすかったです。
出版されてから10年経つものの、内容は今でも十分通用するものが多いように感じました。
ビジネスの本質的なところを中心に語ってくれているので、会社員だけではなく、個人でビジネスをしている方にも参考になると思います。
スターバックスの思いも随所に感じられるので、読後には思わずスターバックスに寄って帰りたくなりました。
また、巻末に掲載されている「スターバックス役員たちの本棚」というコーナーも優秀です。
ビジネスパーソンなら一度は読んでおきたい名著が複数紹介されており、次に読む本の手引きにもなっていて便利でした。
まとめ
この記事では、ジョン・ムーアさんの著書である『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』の概要と感想をご紹介しました。
スタバを支える様々な哲学や想いの凄さを、短時間で感じることができる良い本でした。
今後スタバに行った際、今までは異なる視点で店内を見渡すことができそうです。
それでは、良きコーヒーライフを。
