この記事は『小さな習慣』についての書評です。
『小さな習慣』は、スティーヴン・ガイズさんの著書。
2017年にダイヤモンド社から出版されました。
目標をばかばかしく思えるくらい小さくすることで、逆に目標達成がしやすくなることを解説した本になります。
- 色々試してみたけれど、なかなか習慣化ができずに悩んでいる方
- 今年こそ新しいことを始めようと思い立ったものの、どのように習慣にすれば良いか分からない方
- 筋トレや読書、ダイエットなど、長く続けたいけどなかなか続かない習慣がある方
本記事が、良書との素敵な出会いのきっかけになれば幸いです。
本の簡単な紹介
既存の習慣化の本とは異なるアプローチを提案した画期的な本。
これまでの本は目標を決めてそこから逆算したり、精神論的な考え方で習慣を形作るものが多い印象ですが、本書では自分自身ですらアホらしいと思えるほどに目標を細分化することで、徐々に習慣化を目指します。
これが意外と科学的なのが面白いところ。
私たちが無意識に手を洗ったり、歯を磨いたりするのと同じで、人は同じ動作を繰り返すことで習慣化ができるようになっています。
これは脳内のシナプスが繋がることで、余計なことを考えなくても体が勝手に反応するようになるからです。
それでは、脳内のシナプスを繋げるにはどうすれば良いのでしょうか?
そう。それこそが小さな行動を何度も繰り返す、いわゆる「小さな習慣」です。
小さくても良いので、毎日同じ行動を繰り返すと、脳内にその習慣用のネットワークが形成されます。
一度シナプスが繋がれば、あとは自転車に乗るのと同じです。
私もこの「小さな習慣」で筋トレを習慣化することができました。
本書を読めば、これまで苦しかった習慣化も、気づけば「やらなきゃ落ち着かない!」というレベルになっているはず。
この本を読んだ理由
皆様は習慣化をどのように行っていますか?
私は運動を習慣化したいなと思った時、まずは「毎日30分筋トレする」みたいな目標を決めて取り組んでいました。
しかし、これがなかなか続かず……。
残業があった日や体調が微妙な日などがあると、「今日はやらなくてもいいかな」と思って休んでしまうのですが、1回そういう日があると、翌日以降も「明日やるから今日は仕方ないよね」というように、ずるずるやらなくなってしまうのです。
もちろん、うまく習慣化できたものもあるのですが、そういったものはそもそも自分が好きだったり、楽しいと感じるものなんですよね。
本当に習慣化したいものほど精神的なハードルが高いので、なんとか上手い方法はないかなぁと悩んでいました。
そんなときに、書店で見かけたのが本書です。
表紙のクマさん(?)も可愛いのですが、帯に書いてある「目標は、ばかばかしいぐらい小さくしろ!」という文句に興味を惹かれました。
これまで読んできた本は、大抵の場合「目標は高く持ちなさい」というものが多かったので、そことのギャップが気になったのです。
せっかくだし、一読して試してみようかなと思って、そのまま購入しました。
印象に残った箇所
特に印象に残ったのは、第1章の「小さな習慣とは何か」と第3章の「モチベーションとわずかな意志の力」です。
今回はそれぞれの中から、個人的に学びになった箇所をご紹介します。
第1章「小さな習慣とは何か」
まずは、そもそも「小さな習慣」とは何か?というところですね。
スティーヴン・ガイズさんは、「小さな習慣」を以下のように定義しています。
- 新たな習慣にしたいと思っている行動を、もっともっと小さい形にしたもの
- 例:毎日100回の腕立て伏せが目標なら、毎日1回の腕立て伏せをする
- ネガティブな行動を改善するものではなく、ポジティブな行動だけを対象にするもの
- 禁煙やギャンブル依存を克服するためのものではない
- あまりにも簡単なので、しないよりするほうがいいと思える行動
- 行動するためのハードルを極端に小さくする
この「小さな習慣」には多くの長所があるそうです。
- 応用の幅が広い
- いつもポジティブな気持ちでいられる
- 一つの達成が次の達成につながり、つねに成功できるため、自然に自己肯定感が高まる
- 小さな習慣として始めた行動が、やがて本当の習慣に変わる
小さな習慣の基本は、「こんなに簡単でいいの?と思うくらいの課題を自分に与え、それをほんのわずかな意志の力を使って実行する」というもの。
小さな課題をこなすことができれば、たいていは「せっかくだし、もう少しやってみようかな?」というように、おまけでもっとこなすことができるようになります。
いったんはじめてしまえば、やりたくないと抵抗する気持ちも弱まるからですね。
まとめると、小さな習慣とは、毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動のことなのです。
たとえ小さくとも、習慣は習慣。
デューク大学の研究によれば、私たちの行動の約45%は習慣で成り立っているとのことなので、ポジティブな習慣を作ることは私たちの日々の行動を変えることにつながるわけですね。
第3章「モチベーションとわずかな意志の力」
スティーヴン・ガイズさんは、モチベーションに頼っても習慣は身につかない、と言います。
そもそもモチベーションとは、自身の感情に紐づいたもの。
私たちは人間ですから、調子の良い日もあれば、悪い日もあります。
調子の悪い日は何かをするモチベーションが不足しているので、行動するための意志の力への負担が大きくなってしまいます。
それなのに、調子の悪い日になんとか行動しようとしても辛いだけです。
大事なのは、モチベーションに頼らず、無意識的に行動できるようにすること。
朝の歯磨きと同じですね。
朝の歯磨きをするときは、自分のモチベーションを気にしていないと思います。
きっと皆さんも、気づけば朝の歯磨きを自然としているはず。
ウェンディ・ウッド教授のチームがテキサスA&M大学で実施した研究では、被験者が習慣的な行動をするとき、明らかに感情的な反応が乏しいことが分かっています。
つまり、習慣化にモチベーションの高低は関係ないのです。
むしろ、退屈だったり、つまらないと感じたりすることの方が多いのかもしれません。
心理学者のジェレミー・ディーンさんも「習慣的行動は無意識におこなわれるだけではない。感情から切り離されている」と述べています。
そこで活躍するのが「小さな習慣」です。
わずかな意志の力だけを使う「小さな習慣」は、モチベーションの状態に左右されません。
しかも、モチベーションとは異なり、意志の力は筋肉と同じように鍛えることが可能です。
自己管理研究の第一人者であるロイ・バウマイスター教授が、1999年に行った実験が参考になるでしょう。
ロイ・バウマイスター教授は、2週間かけて姿勢を正す努力をした学生は、そうしなかった学生と比べて意志力が鍛えられ、それに続く自制心の調査でも明らかな改善が見られた、と報告しています。
つまり、意志の力は毎日使うことで強化できるわけですね。
「小さな習慣」はごくわずかな意志の力しか必要としないため、普段のモチベーションに左右されず、しかも毎日コツコツ続けることで意志の力も鍛えられるので、さらに習慣化しやすくなっていくのです。
感じたこと・考えたこと
既存の習慣化の実践本とは異なる方向からアプローチした良書でした。
習慣化に関する本でよく見かけるのは、「一つの目標を決めて何がなんでもこなす」というような、ある意味で体育会系な根性論が多いように思います。
しかし、この本はそれらとは真逆で、「こんなことして何の意味があるの?」と感じてしまうほど簡単で小さいステップに取り組むことを提案しているところが面白いところです。
しかも、一見トリッキーな手法に思えますが、これが実は脳の神経回路の構築ルールに乗っ取った効果的な手法というのがすごいですよね。
びっくりするほど簡単なステップを積み重ねて脳の回路に行動を定着させるからこそ、意志の力やモチベーションに頼らずとも習慣化できるようになる、というロジックは目から鱗でした。
本書で書かれているように、無意識に行動を開始できるようになれば、そのあとの2歩目、3歩目は自然と歩み出せるようになることでしょう。
私も食事の後は無意識に歯磨きをしてしまうので、この方法には納得感がありました。
これまでは大きな目標を掲げて失敗することが多かったのですが、この機会に小さな習慣を取り入れてみようと思います。
まとめ
この記事では、スティーヴン・ガイズさんの著書である『小さな習慣』の概要と感想をご紹介しました。
小さな習慣は、いつでもどこでも気軽にできるのがミソです。
心理的ハードルが圧倒的に低いからこそ、疲れているときでも、眠いときでも、状況に関わらずにこなすことができます。
実際に、私も本書を読んでから小さな習慣を取り入れてみました。
私の場合は「スクワットと腕立てをそれぞれ1回行う」というものです。
たかが1回、されど1回。
スクワットと腕立て伏せの正しいやり方を確認したことも功を奏し、少しずつ腹筋と胸筋が大きくなってきました。
今の所、1ヶ月以上毎日続けることができています!
既存の方法でうまく習慣化できなかった方は、ぜひ一度、本書の「小さな習慣」を取り入れてみて欲しいです。
日々の小さな一歩が、きっとあなたの人生を大きく変えてくれることでしょう。