この記事は『WHITE SPACE ホワイトスペース:仕事も人生もうまくいく空白時間術』についての書評です。
『WHITE SPACE ホワイトスペース:仕事も人生もうまくいく空白時間術』は、ジュリエット・ファントさんの著書。
2022年に東洋経済新報社から出版されました。
近年注目されている、「あえて何もしない時間を作る」ことのメリットを解説した本になります。
- 一日のスケジュールがびっしり詰まっていて、なんとなく疲労を感じている方
- スケジュールが空欄だとなぜか不安になる方
- 「予定がない」ことが悪いことだと感じてしまう方
本記事が、良書との素敵な出会いのきっかけになれば幸いです。
本の簡単な紹介
余白の時間(本書ではホワイトスペースと呼ぶ)を大切にすることを説いた本。
GoogleやP&G、NIKEなどの大企業も、本書の戦略的「何もしない」時間術に注目しています。
あえて何もしない時間を作ることで、普段の集中力や生産性がアップするのです。
マインドフルネスが流行っていますが、その流れを汲んでいるといっても良いでしょう。
時間に追われながらも、予定に空白を作るのを恐れる現代人。
そんな私たちにとっての必読書かもしれません。
この本を読んだ理由
他の書評でも書いていますが、エンジニアって結構きつい時期が多いです。
場合によっては平日の残業や土日・深夜の緊急対応が続くことになるのですが、そういう日々って辛いんですよね……。
この本に出会ったのも、そういう辛い時期でした。
まずは白い表紙が目に映り、続けて灰色の帯に「戦略的に何もしない時間」と書かれているのを目にしたのです。
私は思わず立ち止まってしまいました。
ちょうど一日一日をもう少しゆったりと過ごしたいと思っていたので、何もしない時間を作る意味とその方法や効果を知りたくなったのです。
しかも、GoogleやP&Gなどの大企業も注目しているとなると、これは興味をそそられます。
何か運命的なものを感じて、そのまま購入した次第です。
印象に残った箇所
特に印象に残ったのは、PART2の「ホワイトスペースを生み出す4つのステップ」です。
今回はその中から、私の学びになった箇所を厳選してご紹介します。
第3章 「戦略的小休止」でホワイトスペースを日常の一部にする
神経学者のアダム・ガザレイさんによると、人間は、脳に休息のための時間を与えないまま、複雑で集中力を要する作業をしていると、認知の疲労を起こすそうです。
この認知の疲労を回復するための唯一の方法は、「脳を休ませること」。
そう、それが本書で提案しているホワイトスペースです。
著者のジュリエット・ファントさん曰く、日常のルーティンにホワイトスペースを組み込むと、前頭葉の再編成と再活性化が促され、ニューラル処理の速度が増して生産性や創造性がアップするとのこと。
つまり、戦略的に何もしない時間と作ることで、脳の働きが回復し、生産性や創造性がアップする、ということですね。
実際、安静時に脳のMRIスキャンを撮ると、脳内の神経回路が活発に活動していることが分かるそう。
コーネル大学の調査によると、ウォール街の企業のコンピュータ利用者が勤務中に休息や短い休憩をとったところ、作業の精度が13%上がったとか。
ホワイトスペースの重要性がわかりますね。
それでは、このホワイトスペースは昨今人気のマインドフルネスとはどのように異なるのでしょうか?
本書では、その違いを以下のように説明しています。
- 瞑想・マインドフルネス:頭に浮かんだ考えを深追いしない。
- ホワイトスペース:思い浮かんだ考えを追っても良いし、アイデアを自由に膨らませても良い
つまり、瞑想やマインドフルネスは頭を空っぽにするものですが、ホワイトスペースは休憩すること自体に意味があり、頭の中は自由にしていて良い、ということですね。
著者のジュリエット・ファントさんは、ごくわずかな時間であってもホワイトスペースを取り入れると効果がある、と仰っています。
お昼休憩の30分でもいいですし、会議と会議の合間の5分でも大丈夫。
とにかく、何事においても一呼吸おくことが大事なのですね。
第4章 「時間泥棒」を手懐けてリスクを強みに変える
時間ってあっと言う間に過ぎ去ってしまいますよね。
これはホワイトスペースも同じです。
著者のジュリエット・ファントさん曰く、ホワイトスペースが枯渇する時間泥棒は主に4つあるとのこと。
- 意欲
- 優秀さ
- 情報
- 活発さ
それぞれについて、軽くご説明しますね。
時間泥棒1:意欲
これがあると、「がんばりすぎ」になりやすくなります。
対処法は目標を厳選すること。
厳選することで集中しやすくなり、質の高いアウトプットにつながるそうです。
時間泥棒2:優秀さ
これがあると、「完璧主義」になりやすいです。
枝葉末節にこだわると、余計に時間とエネルギーを使ってしまいます。
0から80%にするのと、80%を100%にするのとでは、力のかかり方が大きく異なってくるので、ほどほどのところを見極めていきたいですね。
時間泥棒3:情報
情報が多いと「情報過多」になりやすいです。
人間の脳は限られた量の情報しか取り込むことができません。
SNSのタイムラインとか見ていると疲れますよね。
あれが「情報過多」の状態です。
重要度の低い情報を取り込みすぎると、本来取り込むべき重要な情報を取りこぼすことになってしまいます。
多くの情報を集めることも大事なことではありますが、そこから一歩進んで、重要な情報を厳選して収集するように心がけてみましょう。
時間泥棒4:活発さ
元気なのは良いことですが、やる気がありすぎると「やりすぎ」になりやすいです。
80%で十分なところを、100%、120%と頑張ってしまうんですね。
時間と体力、気力が満ち溢れているのなら良いかもしれませんが、人は絶えず動いていると思考が制限され、徐々に心身が消耗してしまいます。
そうすると、頭も働きませんし、体の疲れも取れにくくなってくるので、生産性も下がってしまうのです。
「過ぎたるはなお及ばざるが如し」ということですね。
感じたこと・考えたこと
のんびりと思索に耽るための長めの小休止や、行動と行動の合間で集中力を取り戻すための短い小休止など、目的に合わせて余白の時間を使い分けるテクニックが紹介されていて、「空白の時間にも色々あるんだな」と思いました。
特にPART2にはさまざまな研究や調査の内容が含まれており、なかなか参考になりました。
一方で、後半でホワイトスペースを仕事に活かす方法も紹介されていたのですが、こちらはちょっと無理やり感があった気も。
仕事の生産性を向上させる系のビジネス書を読んだことがある人は、PART2までの内容で十分かもしれません。
ですが、少なくとも本書のおかげで、以前よりも「何も予定がない時間」を肯定的に捉えることができるようになったと思います。
時間に追われている感の強い人は、土日にゆっくりと本書を読んでみてはいかがでしょうか?
本書はPART3まであるのですが、PART2までであれば、そんなに時間はかからないと思います。
まとめ
この記事では、ジュリエット・ファントさんの著書である『WHITE SPACE ホワイトスペース:仕事も人生もうまくいく空白時間術』の概要と感想をご紹介しました。
最後のPART3は個人的にあまり納得感は無かったのですが、前半は学びが多かったです。
私はWebエンジニアなので、PART3で紹介されていたホワイトスペースの実践テクニックは使う場面があまり無いように感じたのですが、会議の多い方や事務作業等がメインの方にはおすすめできると思います。
気になる方は書店で軽く立ち読みをして、内容を確認してから購入しても良いかもしれません。
本書の考え方自体はとても良いと思いますので、私も取り入れられるところは導入してみようと思ってます。
みんなでゆとりのある生活を送っていきたいですね。